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2024-05-11

九州大学で土木を学ぶみなさんと
土木遺産な旅へ !

今、土木遺産な旅を通じて、技術者や専門家の方々から話しをうかがいながら地域を巡る活動が広がっています。
その一環として、九州大学工学部土木工学科のみなさんと、九州大学工学研究院の佐川康貴准教授のもと『土木遺産な旅のススメ』をテキストに講義を行い、フィールドワークとして「土木遺産な旅 2024」バスツアーへ。九州各県の大学生たちと旅し、課題として「旅ノート」を作成するという企画で、その第 1 弾となりました。

【土木遺産な旅 2024 のコース】
九大学研都市駅 → 通潤用水(小笹円形分水) → 通潤橋→ (旧)阿蘇大橋→ 新阿蘇大橋 → 立野ダム → 帰路

学芸員の西さんのガイドで学ぶ通潤用水小笹円形分水

学芸員の西さんのガイドで学ぶ通潤用水小笹円形分水

水争いを見事に鎮めた
水を公平に分ける土木工学の粋

地形の低いところを流れる笹原川の水を引き入れ、野尻、笹原地区と、通潤橋が架かる白糸台地に、田の面積に応じて送る「通潤用水小笹円形分水」。昭和 31年(1956)に完成し、長年の水争いを見事に鎮めたという土木構造に、みな感銘を受けていました。しきり壁によって 8:25:2 に分けられ、ガイドをしていただいた学芸員の西さんによれば、地元の人びとはみな、この分水についてたくさんのことを語れますとのこと。

円形分水と繋がる用水路の流れ

「重機無しでこれほどのものを造れるのか !」

熊本地震の復旧工事を終えた通潤橋で、震災時のことをうかがいました。漏水の補修のため 17年ぶりに掘りあげた水管、それを繋ぐ漆喰の秘話、水門のことなど、壮大な通潤橋の上で聞くと、再び通水した瞬間の技術者のみなさんの安堵と喜びがより想像できました。
「江戸時代に造られたとは思えないほど壮大なものだった。重機無しでこれほどのものを造れるのか ! と感動した。通潤橋ではサイフォンが使われているとのことで、自分が今勉強している学問が社会でどう役に立っているのかを知ることができた」とは、ツアーの後に寄せられた旅ノートに記された言葉です。

国宝となった通潤橋

通潤橋の手前にて震災復旧と維持管理についてうかがう

通潤橋の手前にて震災復旧と維持管理についてうかがう

響きました、遺訓の「自治」

旅ノートより、「通潤橋の興味深い点として、これほど大きな土木構造物が藩主導ではなく、遺訓にも記されているように「自治」、つまり地域社会の主導によって建設され、その管理も自治で行ってきたということである」。通潤橋を見た後に、最初は通り過ぎていたブロンズ像に見入るみなさん。通潤橋のスケールに、惣庄屋布田保之助の「自治」という言葉が響いていました。

通潤橋の手前にて審査復旧と維持管理についてうかがう

近くの「本さつまや」で地元の山菜を使ったお弁当

近くの「本さつまや」で地元の山菜を使ったお弁当

安全性と景観への配慮、早期復旧
技術者が語る現場のリアリティー

震災当時のまま、遺構として残る旧阿蘇大橋。その現場で、断層が走る真上に架けられた新阿蘇大橋の設計に関わられた建設コンサルタントの長大の西村さんのお話しをうかがいました。阿蘇ジオパークの柱状節理の景観を守りつつ、熊本地震級の震度にも耐えられる橋という安全性、そして短い工期という難題に立ち向かった経緯に、たくさんの質問が飛び交いました。
「アーチ橋を建設するには橋脚を活断層の近くに入れなければならず、橋脚が崩れた際に橋全体が崩落するというリスクを持つ。敢えて渓谷に橋脚を通す PC3径間連続ラーメン箱桁橋が採用された」。みなさんの旅ノートには、技術的なメモが多く残されていました。

震災遺構として保存されている旧阿蘇大橋

構造について学び、みんなで渡った新阿蘇大橋

構造について学び、みんなで渡った新阿蘇大橋

先人の叡智を通して、土木工学の今を知る
「この感動を忘れることなく」

最後に訪れた立野ダムでは、工事監督の鵜ノ木さんをはじめ地元のダムツアーガイドの方のお話とともに、巨大な堤体の内部まで見学させていただきました。「人生で初めてダムの中に入った」との感想も。
震災復興のシンボルともなった南阿蘇鉄道の立野橋梁の背景となる立野ダム。白川の洪水から市街地を守るために建設された洪水調節専用の流水型ダムで、日頃は水を貯めていません。「放流孔を三つ設けており、一番下のものは白川のもとの河床と同じ高さである。もとの河況を残しつつ、流量が増えたら他の放流孔からも放流される」と、旅ノートより。
試験湛水や、川床や法面の景観上の工夫など、巨大なダムの設計に込められた技術者の思いをうかがい、「この感動を忘れることなく、今後の勉学及び研究のモチベーションにしていく」と、旅ノートに記された言葉。この旅の記憶が今後のキャリアの中で蘇る旅になったことが伝わってきます。
ご協力いただいたみなさま、ありがとうございました。またぜひ阿蘇へいらしてください!

現地ガイドのご案内で見学

立野ダムの内部へ

立野ダムの内部へ

土木遺産な旅、ありがとうございました !

土木遺産な旅、ありがとうございました !